
みなさま、ヨーロッパの「貴族」って聞いたら、どんなイメージをお持ちかしら。

↑こんな長閑な景色のところを白馬の引く馬車で・・・なんて、私だけ?
ドイツにはもはや皇帝や君主はいないけど、貴族出身の家系の人たちはいる。名字にvon(フォン)がつくのがその印。例えばゲーテの名前はJohann Wolfgang von Goethe(ヨハン・ヴォルフガンク・フォン・ゲーテ)といい、正式にはヨハン・ヴォルフガンクが名前、フォン・ゲーテが名字。名前を訳すと、ゲーテ家のヨハン・ヴォルフガンクさん、という感じである。言い換えれば、名前にvonが無ければ貴族ではないということ。ベートーベンがLudwig van Beethovenという名前で、vonではなくvanなのにウィーンの宮廷社会で貴族と勘違いされたことをそのままにしていたとかっていうエピソードはクラシックファンなら一度は聞いたことがあるだろう。

ところで、先日もちらっと書いたが、5月最後の週の木曜日にうちのドイツ人の母親がザクセンから遊びに来て、週末に一緒に北ドイツの妹の家へ行ってきた。金曜日の午前中にバタバタと仕事を終わらせ、慌ただしく出発。ここはブレーメン手前のアウトバーンのパーキング。

バックに見えているのはパーキングのトイレ。フリース着てトイレ近くのこんなベンチでタッパーに入ったお弁当を前にまず一服しているのがうちのドイツ人の母親。ええ、そうなんです。彼女は貴族。名字にvonのつく正真正銘の貴族。みなさまの貴族のイメージ、壊しちゃいました?彼女はザクセン地方の貴族の出身で、戦争や東西分裂のために何もかも失ってしまったけど、その生き様は貴族の誇りに満ちている。子供の頃に目の前で祖父がソ連兵に射殺されたというエピソードを初めとして辛酸をなめ尽くした人生だけど、常に前向きで、常に胸を張って生きている素敵な女性。
ちなみにタッパーの中身はうちのドイツ人お手製のフリカデレというドイツのハンバーグと、マルクト市場で買った鶏のスモークのスライスと、写ってないけどめぎの作ったかぶの浅漬け。グレイの水筒に入っているのはエスプレッソコーヒーで、赤い小さい方は中国茶。赤い水筒の左にちょこっと上だけ写っているペットボトルはめぎが日本から持ち帰ったお茶ので、中にはミルクが入っていて、エスプレッソとそのミルクでカフェオレにするというわけ。ドイツのアウトバーンには美味しいレストランがないので、いつもこうやって準備していく。貴族の母親も、出かけるときにはハムサンドなどをつくって持参するとか。時代が時代なら召使いが用意してくれたんでしょうけど・・・民主化や平等って、良い面もいっぱいあるけれど、味気ないこともいっぱいありますわねえ。

遅い昼食を取った後、金曜日の午後とあってアウトバーンがブレーメンのあたりでちょっと渋滞したので下道へ。向こうに見えるのがブレーメン。

一般道も渋滞してたけど、距離的にちょっとショートカットできたみたい。

休憩入れて4時間近く走ってようやくアウトバーンを降りると、そこは北ドイツの風景。

煉瓦が多いのは、北ドイツに石がないから。

あ、ヒッチハイクしている人が。全然車止まってくれないみたいだったけど。

さてさて、北ドイツの妹の家と言えば・・・それは、以前はここを左に曲がった方向にあったんだけど・・・長い読者の方は森の家のことを覚えていらっしゃるかしら。

知らない方で興味のある方はカテゴリーの「北ドイツの森の生活」とその続きのお話「妹の家」をどうぞご覧になって。簡単に言えば、動物たちと一緒でとっても美しく楽しかった森の家の時代は過ぎ去り、新しい人生をスタートさせた賃貸生活を経て・・・

去年の秋に妹はこの家と土地を購入。そうそう、去年めぎが日本へ行っていた間、うちのドイツ人はここへ引っ越しの手伝いに行ってたの。

貴族の血を引く娘(=うちのドイツ人の妹)の暮らしのテーマは、「自然」と「自立」。そのお話は明日から。
この記事へのコメント
mimimomo
日本は本物の貴族はいないですものね~
昔の皇族くらい。
北ドイツ、グリーンが美しいですね。
krause
母ちゃん
新しいお宅を購入されたんですね~。皆さんで訪問されたら喜ばれたでしょうね(^^)
Baldhead1010
Inatimy
映画に出てきそうな、白いタイツ姿の男性なのでした・・・。
妹さんの家のまわりには緑いっぱい。 紫陽花もありますね~。
manamana
のの
いつも勉強になります♪
貴族の出身なんて、ホントその響きに憧れますね。
こいのぼりの学生さんは先生になられたんですね!
おめでとうございます(*^^*)
自分の夢・目標を叶えた方って尊敬します。
夢空
hatsu
『自然』と『自立』のお話、楽しみにしていまーす♪
ナツパパ
あれは一種の芸名、と聞いたことがありますよ。
クラシックの世界では、VONが付いていた方が良いのかしらねえ。
ところで、お母様が貴族と言うことは、ドイツ人さんも貴族の血筋なんですよね。
やはり、お名前にはVONが付いているのでしょうか。
HIROMI
タッパーの中におかずが入っているという庶民感覚が素敵。
ぽりぽり
Bijoux
お義母さまも義妹さんもたくましいー^^
素敵な思い出を沢山つくれる
お家になりますように☆
テリー
ドイツ人の貴族、誇り高いのは、想像できます。
Jalana
最初の写真なんか映画に出てくるシーンみたいです。
たいちさん
今回の記事とは関係ありませんが、昨夜「世界不思議発見」というテレビ番組で、バスク地方を放送していましたので、めぎさんと重なりました。
rino
だから、やっぱり・・・ドイツ人さんは貴族の血をひいているのね。。。高貴な感じがしますもん(^^)
春分
今の日本人は毎日肉を食い酒を飲み世界中を旅行し・・・貴族っぽいかな。
もっとも、3代は続かないと品格は伴わないものだろうけど。
まあ近江商人の末裔がえらそうなことは言えませんが。
hideyuki2007y
マリエ
妹さんの事覚えてますよ、森のお家・・・・自然と自立ですか、これもまた好い響きだわ~(*^_^*)
miffy
masa
受け継ぐのであれば、めぎさんのファミリーネームもVon付きってことですよね?
と、すればめぎさんも貴族!?
misaboo
お馬さんものびのびしてる。
貴族のお母様、心に色んな事を刻んでこられたのですね。
積み上げてきたものがあるからこど、
堂々生きていかれるのですね。素敵です。
くりっぴ
Mimosa
北ドイツののどかな風景いいですね。癒されます...♪
ドイツ人さんやお母様が貴族のご出身だなんて素敵だわ~☆
もとこさん。
その彼に見初められたという事は? ああ、めぎさんもやっぱり…
この家系に相応しい素敵な方なんだわ^-^)
めぎ
貴族の話と北ドイツの導入にコメントとniceをありがとうございました。
vonがつく名前・・・それは、ドイツでもそう多くはありません。貴族制度も廃止されましたから、特権も全くないわけですが、名前のvonは残ってます。
カラヤンは18世紀末に貴族に格上げされた家のようですね。だから、指揮者のカラヤンは生まれは貴族ですが、オーストリアが1919年に貴族制度を廃止した際に、正式な名前からvonが消されてしまいました。でも、カラヤンは芸名としてその後もvonを使い続けたそうですね。
ドイツではオーストリアのようにvonを消さなかったため、名前で貴族の家系だったことが今でも分かります。その名前を継げば、子供の名前にもvonがつきます。でも、うちのドイツ人と妹は、母親の名を継がなかったため、つまり貴族でない父親の名前を継いだため、貴族ではありません。貴族の血を半分受け継いでいるだけです。したがって、めぎの名前にもvonはついてません。
血を継いでいても名前にvonがつかない以上は貴族じゃないわけですが、vonのつく母親を持つというのは、うちのドイツ人にとっても妹にとってもそれなりに大変な人生であったことと推測します。暮らしは質素でも、もしかしたら庶民以下の質素さでも、貴族の「誇り」はすごいんです。vonを継いでいないうちのドイツ人はその誇りを埃のように揶揄してますけど、血筋というのは侮れないもので、彼もやっぱりどこか誇り高い雰囲気を持ってますね。あ、でも、冬になると白い股引はいて、ホワイトナイトだと言ってバレエの王子様みたいに踊って見せるおバカです。手足が長いから、そして指が綺麗だから、きっとInatimyさんのイメージ通りですよ。
春分さんのおっしゃるように、全くの庶民の日本人が霜降りのお肉や高いお刺身にお金を使い、毎週のように外食し、銘柄に拘って高いお金をかけていいお酒を集め、海外旅行に何度も行くという貴族みたいな贅沢を享受できるようになった一方で、本物のヨーロッパの貴族の生活は極めて慎ましいものです。うちのドイツ人の母親はヨーロッパの外へは出たことないんじゃないかしら。この夏はキームゼーという南ドイツの湖のほとりで一ヶ月の休暇を過ごすそうですが、一泊一人あたり20ユーロ(約2200円)程度の宿に泊まるそうでしたし。戦争や東西分裂の所為でたくさんのものを失い、すっかり貧乏になってしまったという背景もありますが、その慎ましくも優雅な雰囲気を見習いたいものだといつも感じています。
でも、見習うのともともとの出自は全く別物ですね~まあ、めぎは外国人ですから習慣やしきたりやものの考え方などハッキリ言ってよく分からないし、分からなくても許されちゃうという特権も持ってます♪
うちのドイツ人の妹の方は、反貴族って感じの自然児みたいな暮らしをしてるんですが、その自立心や強さはやはり母親譲りだなあと感じます。そんな誇り高き生き方の雰囲気を、これからの旅行記から感じていただければと思います。
もんとれ
めぎ
こういう花や緑や馬たちを写真に撮りに行ける幸せを思いましたわ。
あの氷の冬があったからこそ、輝いて見えるんでしょうね。